大分県ソーシャルフットボール協会指定強化選手・立野大河のコラム(仮)

大分県ソーシャルフットボール協会指定強化選手《TAIGA.》こと、立野大河選手の連載コラムです


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【連載第21回】マズローの五段階欲求(2024年11月5日更新)

こんにちは。こんばんは。TAIGA.です。
今回は「マズローの五段階欲求」というテーマでお話しします。
僕は大学生時代に社会福祉を学んでいたのですが、社会福祉関係の仕事をしていない今でも、生活の中に活きていることはたくさんあります。特に今回お話しする「マズローの五段階欲求」と「バイスティックの七原則」は、生活をする上において知っておくと役に立ちます。バイスティックの七原則については、次回お話しします。

「マズローの五段階欲求」とは

「マズローの五段階欲求」とは、アメリカの心理学者であるアブラハム・マズロー氏が提唱した「人間の欲求を五段階で説明した心理学的理論」です。
この理論は、外側から見える行動ではなく、意欲や感情などの内側にある主観的な心の動きに注目し、人間の心理を理解しようとするアプローチ方法になります。マズロー氏が提唱した五段階の欲求は、階層型であり、下層の欲求から満たしていくことで、人間は最終的に自己実現に至るとされています。

この欲求を満たすための行動についても、マズロー氏は二つのことを提唱しています。
一つは「欠乏動機」です。これは、「足りないから満たしたい」という動機で行動を起こすことを指します。もう一つは「成長動機」です。これは、「欠乏動機によって欲求が満たされると、自分の能力を活かしてさらに成長したい」という動機で、自己実現を図っていくことを指します。

自分で状況を打開できるようになる

この「マズローの五段階欲求」は、心理学から来た理論ですが、現代においてはビジネスやマーケティングに使用されるようになりました。
では、なぜ、ここで「マズローの五段階欲求」というテーマで話すのか、それは「今自分が置かれている状況の打開策を自分で考えることができるようになるから」です。

精神障がい者である僕は、今自分が置かれている状況や、自分が生活するうえでストレスフリーな環境を自分で作ることをしています。ここまで行動できる方もいれば、全く動けない方もいると思います。
今の自分が置かれている状況を理解したうえで、自分の人生を豊かなものにしていくには、自分で動くしかありません。もちろん時には誰かに何かをお願いすることも必要です。

ただ、その際に「自分は何ができなくて、どんなことが足りてないから、そこをお願いする」という、具体的なところまでわかっていないと、お願いすることができませんし、支援者側も、障がいを持っていてもできることがあるのにも関わらず、そのできることの機会を奪ってしまいます。
「自分を知る」という意味と、主体的に行動するという意味で、この「マズローの五段階欲求」は活きてくるのです。

どんな欲求があるのか

では、「マズローの五段階欲求」にはどんな欲求があるのか、具体的な話もしながらお話しします。読んでくれているみなさんも、自分の日常生活と照らし合わせ、どんなところが足りていないか、逆に自分はどんなことが足りているのか(他人のサポート有も可)を考えていきましょう。これから出す欲求は、1番を最下層、5番を最上層とします。

1.生理的欲求
生理的欲求とは「生命を維持したい欲求」です。人間が生きていくための基本的かつ本能的欲求のことです。お腹が空いたからご飯を食べる(食欲)や、疲れている、眠いから寝る(睡眠欲)などが当てはまります。
これは全ての生物に備わっている欲求であり、この欲求が満たされないと次に進むことができません。

2.安全の欲求
安全の欲求とは「生命に関するものを維持したい欲求」です。自分の心身の安全が確保された生活を送りたいという欲求のことです。住まいがあることや、生理的欲求を維持するための必要最低限の収入やお金があること、労働環境が整備されていることや、ハラスメントがないことなど、生活をするうえで自分に対して苦がない状態である状態と言えます。
この欲求は、乳幼児に顕著に見られますが、成長するにつれて自然と次の欲求階層に進むとされています。

精神障がい当事者の僕からすると、精神障がいを持っている方は、この欲求が一時的に満たされないことがよくあると感じています。特に、賃金や収入といったお金の面や、家族または支援者からの障がいに対する理解と配慮、職場等の環境の不備など、自分だけではなかなか改善することが難しいことが問題として発生するのではないでしょうか。
こうしたことは、自分のみで解決しようとせず、周りの人間やサービスをうまく使いながら、自分に合った環境にこだわっていくことをお勧めします。

3.社会的欲求
社会的欲求とは「他者とのつながりや帰属したいという欲求」です。集団に所属したい、仲間を得たい、家族や友人などから受け入れられたいという欲求になります。
この欲求は、「自分はここに居ていいんだ」と安心感を感じられることが、一番の目的になります。

精神障がいを持っている方は、この欲求が強いのではないでしょうか。様々な面から、孤立してしまったり、集団に属せない方が多くいると感じています。
僕自身も、三年前に障がいが関係し、仕事をクビになったことで、この欲求を満たせなくなりました。そして、貯金を数か月で使い切ってしまい、安全の欲求が満たせなくなった結果、焦ってしまったり、変に勘ぐってしまい家から出られなくなってしまいました。

現代においては、SNSの普及により、直接会ったことがない人同士が、交流することができるようになりました。ただし、SNSはネット上のつながりであり、問題やトラブルも発生しやすいのが現状です。
精神障がいを持っている方にとって、SNSは自分の居場所を簡単に作ることができるツールにはなりますが、それが100%になってしまうと、結果的に孤立の状況と変わらないと考えます。
精神疾患の状態にもよりますが、なにかをしたいという欲求がなかったとしても、動ける方は病院がやっているデイケア等に参加することをお勧めします。

4.承認欲求
承認欲求とは「他者から価値ある存在と認められたい欲求」です。
承認欲求は二段階に分けられており、低位の承認欲求は「他者から注目されたい・認められたい・褒められたいなど」を指します。一方で高位の承認欲求は「自分に自信を持ちたい・自分自身を高く評価したいなど」を指します。
人によっては、低位の承認欲求が満たされることで満足する場合もあります。

承認欲求という言葉そのものは、SNS の普及とルッキズムの時代によって、多くの人が当たり前のように持つ欲求になりました。特に低位の承認欲求は、SNS等で満たすことができるようになりました。
ただ、この承認欲求は、誰もが簡単に欲求を表に出すことができるようになった反面、満たされる度合が高くなったように感じます。資本主義且つ資格社会であり、ルッキズムがより高度になった現代社会において、この承認欲求が満たされていると感じられる人は少なくなってきていると思います。

特に精神障がいを持っている方は、他者や社会から「あなたは価値のある人間ですよ」と承認されることは難しいのではないでしょうか。外見や資本、そして社会的地位が絶対的な判断基準となっている現代社会において、精神障がいのみならず、「障がい」はハンデになってしまいます。
ここで大事なことは、「障がいを持っていても認めてくれる社会や人間を大事にする」「障がいの有無関係なく現代社会では承認欲求を満たすことは難しい」という二点を頭に入れておくことです。多くを求めず、今あるものに感謝しながら幸せを見出すことが大事だと思います。

5.自己実現の欲求
自己実現の欲求とは「自分の能力を発揮して創造的な活動をしたい欲求」です。自分が満足できる自分になりたいと願う欲求のことを指します。五段階欲求の中で最上位の欲求であり、この欲求の形は人それぞれです。「自分が専門とする分野で成功したい」や「理想の家庭を築きたい」等です。

自己実現の欲求は、「理想の自分になりたい」という欲求です。精神障がい当事者の僕は、この欲求が一番難しいと感じています。それは、達成することもそうですが、「理想の自分ってなんだ?」と感じてしまうからです。
僕は、少し先の未来の自分が想像できません。このことは様々な原因が考えられますが、発達障害の特性でもあります。「未来よりも今」を考えてしまいがちです。今楽しいからとりあえずやってみる、今苦しいから続けるのはやめる、この繰り返しなのです。
もちろん続けていたとしても、何の成果も出ないことは良くあります。いわゆる「努力は報われない」です。ただ、努力した結果は報われなかったとしても、努力した過程のなかで経験したことや勉強したことなどは、違うところで活きたりもします。
まさに、今僕が「マズローの五段階欲求」についてお話ししていますが、大学生時代に社会福祉を学んだ過程が、今になって活きているのです。

何が言いたかったかというと、精神障がいの方にとって自己実現の欲求を達成することは、かなりハードルが高いです。ただし、「達成できないから挑戦しない」のではなく、「達成できなかったとしても、挑戦すること自体には意味がある」ということです。
理想の自分や、少し先の自分がわからず、とりあえず今目の前のことに必死で、今の状態を安定させたいと思っているとしたら、それを達成することは立派な自己実現になります。達成できなかったとしても、その過程で学んだことを次に活かせば、意味のある挑戦になるのです。
自己実現の欲求は、人によって理想が違うので、いわば自分で作ることのできるオリジナルの欲求とも言えます。

総括

総括です。マズローの五段階欲求は、生理的欲求→安全の欲求→社会的欲求→承認欲求→自己実現の欲求と、一段階ずつ満たされるごとに、人間が自動的に求めていく欲求の階層を提唱したものです。もともとは心理学の内容ですが、今ではビジネスやマーケティングなど様々な分野で扱われています。
精神障がい当事者にとっても、この理論は活用できると僕は思っています。「今の自分がどの状況に置かれていて、何が必要なのか、それは自分だけでなんとかできることなのか、できないなら具体的になにを他人にお願いすればいいのか」、こうしたことを考え、実行することで、自分が生きやすい環境や社会の構築を図っていけると思います。

僕のおすすめは、「紙に書きだすこと」です。この理論を理解し、頭の中で構築することは難しいです。日常生活を送っていると、当たり前のように満たされている欲求もあります。自分には関心がない欲求もあります。どこか満たされていると、満たされいない部分が見えなくなってしまうこともあります。
まずは自分の状況とマズローの五段階欲求を照らし合わせて、何ができていて、何ができていないか、もしくは達成したいと思っているけど達成できていないかを確認してみましょう。そして、階層が低い欲求から、満たしていくことが一番の近道になると思います。



今回は「マズローの五段階欲求」というテーマでお話ししました。この記事を読んでくださった方が生きやすい環境と状態で生活していける助けになれたら幸いです。
次回は「バイスティックの七原則」というテーマでお話しします。バイスティックの七原則は、社会福祉の分野における相談援助の基礎になります。他者とのコミュニケーションを行う上で、非常に役に立つものとなっています。

それでは、また✋

TAIGA.

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