大分県ソーシャルフットボール協会指定強化選手・立野大河のコラム(仮)

大分県ソーシャルフットボール協会指定強化選手《TAIGA.》こと、立野大河選手の連載コラムです


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【連載第22回】バイスティックの七原則(2024年11月11日更新)

こんにちは。こんばんは。TAIGA.です。
今回は「バイスティックの七原則」というテーマでお話しします。
バイスティックの七原則は、社会福祉分野において、支援者とクライアント(支援される人)が、コミュニケーションを用いて信用関係を形成するにあたって、支援者側に必要とされる七つの原則です。
社会福祉分野の専門的知識にはなりますが、生活をする中で、他者との関係性を構築するうえで、コミュニケーションは外せない部分であり、社会福祉に関わっていない人でも、バイスティックの七原則は、コミュニケーションを取っていくうえで、活用できると思います。

バイスティックの七原則とは

バイスティックの七原則は、1957年にアメリカの社会福祉学者であるフェリックス・P・バイスティック氏が、「ケースワークの原則」で記したのが始まりです。社会福祉分野におけるケースワーク(相談援助)において、支援者とクライアント(支援される人)が、信頼関係を構築するうえで、支援者に必要となる「倫理と行動の原理」になります。

近年はケースワークだけでなく介護や精神の分野においても活用されるようになりました。また、「バイスティックの七原則」は、社会福祉士や介護福祉士の国家試験での問題に頻出するくらい、当たり前の知識とされています。

具体的にどう活用できるか

僕は、「バイスティックの七原則」というものは、あくまで人間同士の信頼関係構築において、コミュニケーションを図る中での手段の一つだと考えています。
では、みなさんは、コミュニケーションを取ることについて考えたことはありますか。何が正解で、何が不正解か、その答えは、コミュニケーションを取る相手によって異なります。しかし、原理原則は、どんな相手でも同じだと考えると、コミュニケーションを取ること自体を難しく考えずに済むのではないでしょうか。
そこで、バイスティックの七原則を説明し、コミュニケーションを取る中で、「具体的にどう活用できるか」まで、お話ししたいと思います。


1.個別化の原則
個別化の原則とは、「クライアントが抱える悩みや困難は、そのクライアントによって違うので、性別・年齢・障がい・人種などで決めつけてはいけない」という原則です。

他者とコミュニケーションを図る上でも、似ている人はいても全く同じ人はいません。例えば趣味・好きな食べもの・好きなこと・苦手なことなど、同じものであったとしても、細分化すると全く違うことは良くあります。自分と同じ趣味では、その知識や見識を深めることのチャンスですし、違う趣味であるなら、自分の知らない世界を知るチャンスでもあります。
他者の抱える悩みや困難に限らず、他者は自分とは違う人間であり、また他者同士も違う人間だと思い、自分の知識や相手の考え方等を広げる感覚でコミュニケーションを取ると、うまく相手と関わることができます。

おすすめなのは、「他者を主語にして5W1Hをうまく使うこと」です。あなたはどうしてそれが好きなのか(嫌いなのか)、あなたはいつからそれが好きなのか、あなたは好きなことにどれくらいお金を使うのかなど、こうした会話をしつつ、相手の意見を聞き、共感したうえで自分のことを話してみましょう。

2.意図的な感情表出の原則
意図的な感情表出の原則とは、「クライアントが自由に感情を表現することを認め、安心して話ができる環境づくりや雰囲気づくりをすること」という原則です。
社会福祉の世界では、主にクライアントのネガティブな感情の表出に焦点を当て、ネガティブな話を安心してできるように、支援者が受容して共感することを指します。

日常でのコミュニケーションでは、他者と自分の意見や考え方が全く違うときに活用できます。どちらが正解で不正解という概念はありません。例え意見が真反対であったとしても、それは他者が持つ物の見方の角度や、考え方からくるものです。
自分と違うからいって、頭ごなしに否定せず、そういった意見や考え方もあると受容し、なぜそう思うのかをより細分化してコミュニケーションをとってみましょう。

3.統制された情緒的関与の原則
統制された情緒的関与の原則とは、「支援者がクライアントの感情に飲み込まれず、自分自身の感情を冷静にコントロールすること」という原則です。簡単に言えば、「クライアントに感情移入してしまい、適切な距離感を無視した状態で支援するのはやめましょう」ということです。

他者とのコミュニケーションでは、他者の話を聞いたとき、受け取り側の自分自身は、様々な感情を感じると思います。その感情に流され、適切な距離感を見誤ってしまうことがあると思います。
具体的には、「自分と考え方が同じベクトルであるために、その他者に肩入れしてしまう」や「自分と考え方が全く違うベクトルであるために、分かり合えないと感じ距離感を取ってしまう」などです。
もちろん、自分の好きや嫌いという感情に合わせた行動は大事ですが、これは、実は「相手軸」の行動にあたります。

コミュニケーションに関係なく、自分の人生は「自分軸」であるべきであり、自分が自分のことをコントロールすることで、生きやすく感じることができます。相手に合わせていると、自分が疲れてしまったり、意図しない孤立を招いたりしてしまいます。
「自分と他者は違う人間である」と頭に入れ、他者の意見や考え方は、あくまで「自分の見識や考え方を広げる」ものであり、自分の意見に自信を持つようにしましょう。

4.受容の原則
受容の原則とは、「クライアントの感情や態度をあるがまま受け容れ、先入観をもち否定してはいけない」という原則です。この原則は、「受容・共感・傾聴」という具体的な方法が確立されており、社会福祉のケースワークにおいて一番重視される原則です。

では、他者とのコミュニケーションでどのように活用するのか。例えば、仕事やスポーツ等、自分より目上の人間とのコミュニケーションで活用できます。
自分が思っていることと、目上の人間が思っていることや、要求が違うことは良くあります。目上の人間の意見が提示されたとき、自分のやり方や考え方が違う場合、頭ごなしに否定してしまったり、自分の意見を押し通そうとすると、円滑なコミュニケーションが取れなくなってしまいます。

ここで大事なことは「結果が同じなら、それまでの過程は問われない」ということです。これは、仕事やスポーツに関わらず、今の結果主義の社会においてすべてに言えることです。つまり、目上の人間は、やり方等を提示しているとしても、求めている結果が出せるのであれば何も言わないということです。
なので、目上の人間の意見や考え方が、自分の意見や考え方と違っているとしても、目上の人間の意見や考え方を、まずは否定せず聞き入れる姿勢を見せることが大事なのです。

5.非審判的態度の原則
非審判的態度の原則とは、「支援者の価値観でクライアントの行動や感情を評価しない」という原則です。
これは、支援者が持つ価値観に当てはめて、クライアントの行動や感情の善悪を評価しないことです。クライアントの行動や感情や発言等の背景にはどんなことがあるのか、生活状況・病歴・人間関係・社会関係などを加味したうえで、中立的な立場を取ることを指します。

コミュニケーションにおいての活用は、他者の考え方や意見を表面的に捉えるのではなく、その価値観はどこからきているのか考えることに活用できます。他者の行動や発言等がどこからきているのかを考えることで、それがたとえ自分にとって都合の悪いことであったとしても、一度冷静になり相手と向き合うことができます。また、より他者の深部に興味を持ち、投げかけを行うことで、「この人は、自分のことを知ろうとしてくれている」という信頼につながります。
自分の話をたくさんするのではなく、相手の発言や行動の真意にベクトルを向けることで、一方通行なコミュニケーションを避けることができます。

6.自己決定の原則
自己決定の原則とは、「支援者はクライアントの意志を大切にし、クライアント自身が自己決定できるようにする」という原則です。困難や悩みを抱えていても、一人の人間であり、人権を持っているからこそ、自分の生き方は自分で決めることができるようにするということです。

この自己決定の原則は、コミュニケーションに当てはめると、他者だけでなく自分にもあることを見失わないようにしましょう。何がしたいか・何が食べたいか・どのように時間を過ごしたいかなど、他者の「どうしたいか」に巻き込まれることも、また自分の「どうしたいか」を押し付けることも、しないように気をつけましょう。
こうした状況で、一番大事なのは「他者と自分の意見を加味したうえで、代替案をもっておくこと」と「お互いが納得できる最終的な話のオチをある程度見定めておくこと」になります。これは、仕事や交渉でも使うことができます。

7.秘密保持の原則
秘密保持の原則とは、「クライアントに関する情報を、クライアントの同意なく他人に話さないようにすること」という原則です。

コミュニケーションにおいて、他者が自分に対して話をしてくれたことは、場合によっては自分にしか話せないことであったりします。また、疾患や障がい等は、他者に公にしたくない人もいます。
また、他者に対して「○○があなたのことを××と言っていたよ」という会話に関しても、その話をすることで、コミュニケーションの相手がどう感じるのかを考えましょう。

客観的な視点で考えてみる

いかがでしたか。バイスティックの七原則は、社会福祉のケースワークにおける基本的な原則ですが、社会福祉の分野だけでなく、人間がコミュニケーションを取りながら人間関係を構築していく上で、参考になったり活用できる箇所はたくさんあったと思います。
特に発達障害を持っている人は、他者とのコミュニケーションが下手と言われています。話さない、もしくはべらべら話してしまう、こうした言語的コミュニケーションは、知らないうちに意図しない形で誰かを傷つけてしまったり、自分が傷つけられたりするものです。しかし、この社会に生きている以上、避けては通れないものでもあります。

今一度、自分のコミュニケーションを客観的な角度で見た時、他者にどう映っているのか、自分が自分自身と話すとしたらどう感じるのか、考えてみてください。

環境は自分自身で作れる

なぜ、ここまで「コミュニケーション」にフォーカスするのか、それは、精神障がいを抱えている人は「環境」によって生きやすいか生きづらいかが、ある程度決まってしまうことが特徴であり、その環境を作るのは「自分と他者の人間関係」であるからです。

つまり、自分に合ったコミュニケーションを手にすることで、「自分が生きやすいと感じる環境を自分自身で作り上げることができる」ということになります。待っていても、誰かが何かをしてくれることは、健常者も含めてありません。
障がいや疾患というハンデを抱えていたとしても、自分が気づき動かなければ、何も変わらないですし、逆に自分が動けば何かが変わるのです。このことは、僕自身の生き様が保障します。



今回は、「バイスティックの七原則」というテーマでお話ししました。
次回は「フットサル活動報告」になります。大会ではなく、日常的にフットサルでどんなことをしているのか、お話しします。

それでは、また✋

TAIGA.

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