大分県ソーシャルフットボール協会指定強化選手・立野大河のコラム(仮)

大分県ソーシャルフットボール協会指定強化選手《TAIGA.》こと、立野大河選手の連載コラムです


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【連載第7回】精神障がい当事者のリアル(2024年8月1日更新)

こんにちは。こんばんは。TAIGA.です。
今回は「精神障がい当事者のリアル」というテーマでお話しします。
精神障がいは、他の障がいと比べて、ぱっと見で分かりにくく、気分の波によって元気な日もあったりするので、他者からの理解がされにくい障がいです。また、同じ疾患でも、その人自身が困っていることは違ったりします。

今回は、僕自身のリアルをお話しし、この記事を読んでくださった方が、「自分だけじゃないんだ」と思ってもらえたり、「精神疾患ってなんかわかりにくいけど、こういうところが病気なんだ」と理解を深めていただけたらと思います。

精神疾患と精神障がいの違い

まず、精神疾患と精神障がいの違いについて話します。
結論、「精神疾患は病気のことを指す(インフルエンザなどと同様)」、「精神障がいは、精神疾患という病気のために、日常生活において障がいがあることを指す(足を骨折して階段を登れないと同様)」です。今回は、病気の面は「精神疾患」、日常生活においての困りごとは「精神障がい」と分けて使うことにします。

精神疾患は、さまざまな精神に関する病気の総称です。具体的な名前を挙げるとかなりの数になってしまうため、今回は、僕が抱えている精神疾患の話だけにします。僕が診断を受けている精神疾患は、「双極性障害(躁うつ病)」、「ASD/ADHD(発達障害)」、「睡眠障害(二次障がい)」の3つになります。
一つずつ簡単に解説します。

双極性障害(躁うつ病)

双極性障害とは、躁状態(気分の波が高いとき)と、うつ状態(気分の波が低いとき)を繰り返す精神疾患です。躁状態が重度の場合を1型、軽度の場合を2型といいます。
双極性障害は、躁状態とうつ状態を交互に繰り返すと思っている人もいると思いますが、実際は「うつ→うつ→うつ→躁→うつ→うつ」といった感じで、基本的にうつ状態が長いです。なので、うつ病と間違えられたり、うつ病と診断されたけど、実は双極性障害だったという場合も結構あります。
うつ病が全人口の約10人に1人がなると言われているのに対して、双極性障害は約100人に1人と言われています。

ASD/ADHD(発達障害)

発達障害とは、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)の3つの疾患の総称です。発達障害は精神障がいの一つとして考えられており、複数の発達障害を抱える人が多いです。僕もASDとADHDの診断を受けています。

発達障害は、生まれつきの脳機能の発達の偏りと、その人が過ごしている環境や人間関係のミスマッチによって、社会生活に困難をきたす障がいのことを指します。つい最近までは、18歳までの子どもであれば診断を受けることができ、それを超えると診断がつかなかったのですが、近年では「大人の発達障害」という、大人になり社会に出てからうまくいかなくなり、その原因が発達障害だったという事例が、社会問題になるほど注目されています。
僕も24歳の時に発達障害があることがわかり、診断を受けました。自分の脳の特性と今の環境とのミスマッチで体調を崩すことが多いので、適応障害の根本的な原因が発達障害にあることも少なくありません。

ASDは、対人関係や社会的なコミュニケーションの困難(他者の気持ちに立てない、わからないなど)や、特定のものや行動における反復性やこだわり(同じものを選んだり、同じことを続けるなど)、感覚の過敏さまたは鈍麻などの特性があります。
ADHDは、不注意(集中できない、なくしものが多いなど)、多動性や衝動性(じっと座っていられない、急に文脈のない自分の話をしてしまうなど)の特性があります。

睡眠障害

睡眠障害は、精神疾患ではないものの、睡眠障害の原因がストレスと深く関係しているため、精神疾患を持つ人の二次障害になりやすいです。代表的なのは、不眠症(眠れない、寝つきが悪いなど)と、過眠症(寝すぎてしまう、日中の眠気がひどいなど)になります。


僕が診断を受けている精神疾患について、簡単に説明しました。続いては、精神障がい(これら精神疾患によって日常生活にどのような障がいが発生しているのか)についてお話しします。これから話すことは、今まさに僕が困っていることであり、薬物療法ではどうにもならないことばかりです。

疲れやすい

仕事をしたり、学校に行ったり、運動したり、疲れることは生きていれば誰しもがあることです。ただ、僕の場合は人よりもかなり疲れを感じやすいです。
実際、自分が元気な状態で活動できていると感じるのは、起床後の約2、3時間だけです。ASDの感覚過敏が結構強く、五感で感じ取れるものは脳で処理されるのですが、入ってくる情報が人より多いため、処理しきれないことがよくあります。

また、双極性障害や発達障害の人がよく困っている「ぐるぐる思考」もあり、自分がどんな状態でも常に頭の中で何かを考えており、脳が休まる時間がありません。ストレスに対する脳のキャパシティが少なく、かつ慢性的な脳疲労の影響により、精神的にも肉体的にも疲れやすいです。
この疲れやすさは、例えば仕事ややるべきことを行えなかったりやり遂げられない、長期的な休養が必要になる、電車に乗ったり外出するのが億劫になる(感覚過敏のため)などといった日常生活に対する障がいにつながります。

数字の管理

僕は、時間やお金といった数字を自己管理することができません。
時間に関しては、例えば決まった時間に寝たり起きたりする、集合時間等から逆算して家を出る時間を決めるなどです。発達障害の特性である過集中や、睡眠障害による起きられないことなどが影響しています。
お金に関しては、貯金が全くできない、決められた金額での生活ができないことがあります。これは、ADHDの衝動性や、軽躁状態でお金を使ってしまうことが関係しており、日常生活において、必要な時に必要なものが買えない、医療などを受けることができないなど、サービスやモノに直結するので、かなり大きな障がいになっています。

本当の自分がわからない

これは双極性障害が関係しています。気分の波は、精神疾患を持っているいないに限らず、誰にでも起こることです。それゆえに、今の自分の状態が、単純に気分の波によるものなのか、双極性障害による躁状態もしくはうつ状態なのかが、全くわかりません。
躁状態に関しては自覚するのが難しいと言われています。また、うつ状態も全く何もできない状態になって初めて自覚することができます。薬物療法だけでなく、セルフモニタリングをし、自分ができることを考えていく上で、現状が病気によるものかどうかの判断がつきづらいのは、日常生活に支障が出ることにつながります。

セルフネグレクト

ネグレクトは聞いたことがあっても、セルフネグレクトを聞いたことがない方もいると思います。セルフネグレクトとは、簡単に言えば「自分の世話を自分でできない、もしくはやらないこと」になります。
具体的には、食事を用意しない、もしくは食べない、お風呂に入らない、洗濯や掃除などの家事を自分で行うことができないなどです。

様々な原因で、このセルフネグレクトに陥るのですが、僕の場合は発達障害が関係しています。ASDの特性である「自分が興味のあることに対しては全力だが、それ以外のことに対しては無関心」が大きく関係しており、僕は自分の生活や人生に無関心です。
今後、一人暮らしをすることになれば、セルフネグレクトは、日常生活を送る上で大きな障がいになると思います。

予想外の出来事

予想外の出来事で一番思いつくのは、仕事における「これやっておいて」という場面だと思います。今日自分がやろうと思っていたことが、何かしらの理由でできない、もしくは、やろうと思っていなかったことをやらなければいけなくなったなど、自分が予想していたことではないことが起きた時、僕はそれを処理するのに時間がかかり、次の行動をとれなくなってしまいます。

発達障害は、個人が持っている能力の凸凹、つまりできることとできないことの差が大きいと診断されるのですが、僕は処理速度が圧倒的に低かったです。
こういった予想外の出来事が起こると、次に何をすべきかの優先順位が崩れ、何をしていいのかわからなくなります。社会人で仕事をするにあたっては大きな障がいといえるでしょう。

未来への見通し

1年後、5年後、10年後、自分がどんな姿で何をしているのか、みなさんは想像したことがありますか。そのためには、これからどんなことをしていけばいいか考えたことはありますか。こうした、未来の自分の姿や環境、キャリアなどを具体的に想像することが僕にはできません。

発達障害の人は、未来よりも今に執着しやすく、今が楽しければそれでいいと考えてしまう傾向にあります。これは日常生活に大きく影響はしませんが、自分が生きて行く上でのプランニングができない、つまり、年齢を重ねるにつれてのより良い生活を自分で選択できないことにつながります。

無関心/苦手意識

無関心や苦手意識を、発達障害の人は強く持っています。僕は、やりたくないことはやりたくないし、それをするとストレスを強く感じます。また、興味のないことに対しては無関心なので、新しいことにチャレンジするのに、時間と大きなエネルギーを使います。もちろんやってみると楽しかったり、興味がわいてきたりもしますが、そこに至るまでが長いのです。
何かを割り切ってやったり、続けたりしなければいけないこの世の中では、障がいになる場面もあるでしょう。

新しい人や環境への適応

新しく関わる人や、新しい環境に入っていくことが、僕は苦手です。
ASDの「対人関係や社会的なコミュニケーションの困難」が関係しています。 とにかく何を話したらいいのかわからなかったり、何をしていいのかわからないことがよくあります。
「自分はこの場所に居てもいいんだ」と思える居場所を作りづらいことが障がいになっています。

混合状態

混合状態とは、双極性障害の状態の一つです。心はうつ状態、身体は躁状態、その逆もしかりのことを指します。混合状態の一番厄介なところは、心はうつ状態で身体は躁状態の時です。動けてしまうので突然何かをやってしまうことが多く、双極性障害の自死が多いのも、この状態が関係しています。

僕は、心は躁状態、身体はうつ状態のことがほとんどですが、動けないのにいろいろなことを考えてしまって焦燥感を抱いたり、無理して動くとその反動が大きく出てしまったりと、やはり日常生活には支障が出ています。


僕が困っていることは他にもたくさんあると思いますが、ぱっと出てかつ自覚しているのは上記になります。
最初にも言ったように、精神疾患や精神障がいは、ぱっと見で理解されません。「こんなことに悩んでいるのは自分だけなんじゃないか」、「みんなは普通に生きているのに、自分はそれができなくてつらい、孤独だ」と感じる人は多いと思います。この記事を見て、「自分だけじゃないんだ」と思ってもらえたら嬉しいです。

また、精神疾患を持っていない人は、精神疾患があることで、日常生活の些細なところに障がいが出ていることを知ってほしいと思います。理解することは難しいかもしれませんが、精神障がいを持つ方が近くにもしいたら、優しく接してあげてください。


今回は、「精神障がい当事者のリアル」というテーマでお話をしました。
次回は、「ソーシャルフットボールの可能性」というテーマでお話ししようと思います。

それでは、また✋

TAIGA.

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